大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)148号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、審決取消事由の存否について判断する。

1  原告は、第二引用例(成立について争いのない甲第三号証)の技術は、扱胴室内に穀稈から千切れ生じた切穂類が多量に集積した状態で脱穀作業を行うと、穀稈を脱穀するための負荷のほかに、その集積した切穂類による扱歯の負荷が加わつて過剰になるから、扱胴室内に集積する切穂類の量である「扱胴室の負荷」を脱穀作業に影響しない程度に少なくしておこうという技術であり、第二引用例に記載の「扱胴室の負荷」は扱胴に供給される穀稈による「扱胴軸の負荷」とは別異の内容のものであり、第二引用例の「開閉板21」は「扱胴室の負荷を軽減させる」ようには作用しても本願考案におけるように「扱胴軸の負荷を軽減させる」ようには作用しない旨主張する。

なるほど、第二引用例には「扱胴室の負荷」の文言が使用されており(例えば第一頁右欄第二五行)、「扱胴軸の負荷」との語は見当らないが、明細書及び図面の記載によれば、扱胴室2内において積極的に回転しているのは扱胴4のみであつて、千切れた切穂類は扱胴の扱歯によつてのみ回転させられているものであると認められるから、「扱胴室の負荷」とは結局において扱歯にかかる負荷であり、それはすなわち「回転軸(扱胴軸)に加わる負荷」であるということができる。そして作動杆19は連結杆22を経て開閉板21に連繋し、開閉板21が開かれることによつて回転軸(扱胴軸)5にかかる負荷が軽減されるように作用するものであるから、原告の右主張は理由がない。

原告は、また、第二引用例には、審決の認定する「回転数の変化に係わりなく、その回転軸にかかる負荷の変動により作動杆が動く負荷検出装置」及び「負荷検出装置の作動杆を、脱穀機の他の箇所の作動部に、該負荷検出装置が回転軸にかかる負荷の増大を検出することにより回転軸の負荷を軽減させる側に作動さすように連繋せしめた脱穀機」なる技術については記載されていないのに審決がその記載があるように認定したのは誤りである旨主張する。

しかしながら、前記甲第三号証によれば、第二引用例には、脱穀作業中に扱胴室2内の切穂類が多くなると扱歯3にかかる負荷が大となること、そのようにして扱歯3にかかる負荷、すなわち回転軸5に加わる負荷が増大すると、その負荷の増大が調車3、摺動環11、ばね14等から成る負荷検出装置により検出され、それに応じて作動杆19が作動し、その作動杆の動作が切穂送出口8の開閉板21に連繋しているので、自動的に切穂送出口8が大きく開かれ、扱胴室2内の切穂類を多量に切穂処理室6に送込んで扱胴室2内の切穂量が自動的に調節され、その結果、扱歯3にかかる負荷、すなわち回転軸5にかかる負荷が軽減されること、そのようにして回転軸5にかかる負荷は脱穀作業中ほぼ一定に保たれ、回転軸5の回転数が落ちることはないことが示されているものと認められる。

してみると、第二引用例には、審決の認定するように「回転数の変化に係わりなく、その回転軸にかかる負荷の変動により作動杆が動く負荷検出装置」及び「負荷検出装置の作動杆を、脱穀機の他の箇所の作動部に、該負荷検出装置が回転軸にかかる負荷の増大を検出することにより回転軸の負荷を軽減させる側に作動さすよう連繋せしめた脱穀機」について記載されているというべきであり、原告の主張は理由がない。

原告はさらに、第二引用例においては、作動杆19は、切穂処理室6の負荷の変動によつて、回転軸5の負荷の変動にかかわりなく、作動するものであつて、回転軸の負荷検出装置の作動杆として機能していない旨主張する。 しかしながら、第二引用例の発明は回転軸5にかかる負荷の変動が、調車9、その螺旋部10、摺動環11、その螺旋部12等から成る負荷検出装置を作動させて開閉板21を自動的に開閉させるようにすることを目的としたものであつて、原告主張のように、切穂処理室6の負荷の変動によつて作動杆19が作動するものとするとその目的が達せられなくなるから、第二引用例のものがそのような技術を採用する筈もなく、また第二引用例にそのような技術が記載してないことはいうまでもない。原告がいかなる根拠によりそのような主張をするのか理解できず、その主張は採用のかぎりではない。

2  原告は、本願考案と第一引用例との相違点<1>について審決は、第二引用例により本願考案に想到することはきわめて容易であるといつているが、第二引用例の技術内容は審決認定のようではないから、審決の結論はその点において誤りである旨主張するが、審決の第二引用例の技術内容の認定に誤りがないことは前記のとおりであるから、原告の主張は理由がない。

次に原告は、第二引用例の負荷検出装置と第一引用例の回転数検出装置とは利用目的及び構造において全く別異のものであり、簡単に置換し得るものではない旨主張する。

しかし、第一引用例の回転数検出装置と第二引用例の負荷検出装置とは、ともに脱穀装置に関する技術であり、しかも、いずれも結局において回転軸(扱胴軸)にかかる負荷の増減を検出することを目的とするものであるから、第二引用例の負荷検出装置をもつて第一引用例の回転数検出装置に置き換えることができないということはできない。原告の主張は理由がない。

3  原告は、コンバインの脱穀装置に対する穀稈の供給量を適正に制御する手段として扱胴軸の回転数を検出していた従前の方法に比して、扱胴軸にかかる負荷を検出する本願考案は、第一引用例のものも第二引用例のものも全く奏し得ない効果を奏するものであるにもかかわらず、審決はこれを無視して本願考案の進歩性について判断していると主張する。

しかし、従前のコンバインの脱穀装置における穀稈の供給量を適正に制御する手段は第一引用例におけるように扱胴軸の回転数を検出していたものであることは、原告の自認するところであり(審決は、本願考案と第一引用例との相違点につき第一引用例の脱穀装置はコンバインに用いるものかどうか不明であることを挙げているが、第一引用例には、制御装置は機械の駆動輪―the driving wheels of the machine―に動力を伝達する変速ギヤを制御するとの記載があるので、この脱穀装置はコンバインに使用されるものと推測される。)、審決は、この第一引用例に代えて扱胴軸にかかる負荷を検出して供給量を制御する第二引用例をもつてし、本願考案に想到することは、当業者にとつてきわめて容易としているのであつて、その判断にはなんらの誤りとすべきところはない。本願考案が第一引用例、第二引用例と同一のものでないことは明らかであるから、それら引用例のものが本願考案と同じ効果を奏するものでないことは明らかである。原告の主張は理由がない。

三  以上のとおりであり、本願考案は、第一引用例、第二引用例並びに本願出願前周知のコンバインに基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるとした本件審決にはこれを取消すべき違法の点はないので、その取消しを求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

機体に装架せる脱穀装置の扱胴軸と機体に装架せる原動機の出力軸に伝導して該扱胴軸を駆動する駆動軸との間に、扱胴軸の回転数の変化に係わりなくその扱胴軸にかかる伝達トルクの変動により作動部が動くトルクピツクアツプ装置を設け、そのトルクピツクアツプ装置の前記作動部を、機体に装架せる走行装置の入力軸と前記原動機の出力軸との間に設けた変速装置に、該トルクピツクアツプ装置が扱胴軸にかかるトルクの増大を検出することにより、走行装置の走行速度を低下さす側に変速作動さすよう連繋せしめたことを特徴とするコンバインの脱穀装置における穀稈供給量の自動制御装置。

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